熱電対コネクタ

熱電対の種類と見分け方|タイプ別の特徴と使い分け

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熱電対には多くのタイプがあります。K、J、T、E、N、R、S、Bと記号が並び、最初はどれを選べばいいか見当がつきません。JIS C 1602:2015 では、白金系の貴金属熱電対3種類(B・R・S)、卑金属熱電対5種類(N・K・E・J・T)、そしてタングステン・レニウム系のC熱電対1種類の、あわせて9種類が定められています。それぞれ使える温度域、精度、価格、得意な環境が違います。この記事では各タイプの特徴を整理したうえで、現場で「これは何型か」を見分ける具体的な方法と、用途からの選び方まで踏み込みます。

タイプ一覧と構成材料

まず全体像を押さえましょう。下表は JIS C 1602:2015 表1 の構成材料と、一般に使われる通称です。通称のクロメル・アルメル・ナイクロシル・ナイシルはいずれも商標なので、規格の呼び方と併せて覚えておくと図面や仕様書で迷いません。

種類+側導体(JIS表記)−側導体(JIS表記)通称
Bロジウム30%を含む白金ロジウム合金ロジウム6%を含む白金ロジウム合金―
Rロジウム13%を含む白金ロジウム合金白金―
Sロジウム10%を含む白金ロジウム合金白金―
Nニッケル,クロム及びシリコンを主とした合金ニッケル及びシリコンを主とした合金ナイクロシル/ナイシル
Kニッケル及びクロムを主とした合金ニッケル及びアルミニウムを主とした合金クロメル/アルメル
Eニッケル及びクロムを主とした合金銅及びニッケルを主とした合金クロメル/コンスタンタン
J鉄銅及びニッケルを主とした合金鉄/コンスタンタン
T銅銅及びニッケルを主とした合金銅/コンスタンタン
Cレニウム5%を含むタングステン・レニウム合金レニウム26%を含むタングステン・レニウム合金―

貴金属系の中でも、B型だけは+側・−側とも白金ロジウム合金で、純白金を使いません。R・S型は−側が純白金です。この構造の違いが、後述する常温域での挙動の差につながります。

使用温度は「常用限度」と「過熱使用限度」で見る

熱電対の温度範囲は、一つの数字では表せません。JIS C 1602:2015 は、空気中で連続して使用できる限度を常用限度、短時間なら使用できる限度を過熱使用限度として、素線径ごとに規定しています(表3)。

種類素線径 mm常用限度 ℃過熱使用限度 ℃
B0.5015001700
R・S0.5014001600
N0.65 → 3.20850 → 1200900 → 1250
K0.65 → 3.20650 → 1000850 → 1200
E0.65 → 3.20450 → 700500 → 800
J0.65 → 3.20400 → 600500 → 750
T0.32 → 1.60200 → 300250 → 350

ここで注意したいのが、線径による差の大きさです。同じK型でも、φ0.65の常用限度は650℃、φ3.20では1000℃と、350℃も違います。「K型は1000℃級」という言い方は太い素線の話であって、細いシース熱電対をその温度で連続使用してよいという意味ではありません。カタログの上限値だけを見て選ぶと、ここで足をすくわれます。

もう一つ、よく見かける「K型は−200℃から」といった下限値は、常用限度ではなく、許容差クラス3および規準熱起電力表がカバーする範囲です。低温側は精度の話、高温側は寿命の話、と出所が違うことを頭に置いておくと混乱しません。

なお C熱電対は、空気中で使用できないため常用限度・過熱使用限度が規定されていません。真空炉や不活性雰囲気で2000℃級を測る、という特殊な用途のタイプです。

卑金属系のタイプを使い分ける

K型は、クロメル(+)とアルメル(−)を組み合わせた、もっとも普及しているタイプです。温度と起電力の関係が比較的直線的で、耐熱・耐食にも優れ、貴金属系より安価です。工業用の多くがK型で、コネクタや補償導線の選択肢も豊富です。

T型は、銅(+)とコンスタンタン(−)の組み合わせで、低温域に強く高精度です。マイナス200℃級の極低温から室温付近の測定で力を発揮します。冷凍・冷蔵、低温実験、ヒートポンプまわりならT型が候補になります。

J型は、鉄(+)とコンスタンタン(−)で、中温域に向きます。還元性の雰囲気に比較的強い一方、鉄を使うため酸化やサビには注意が要ります。E型は、クロメル(+)とコンスタンタン(−)で、卑金属系の中で起電力が最も大きいタイプです。感度が高いので、小さな温度差を読みたい用途に向きます。

N型は、ナイクロシル(+)とナイシル(−)を使う、いわばK型の改良版です。K型で問題になりやすい高温域の酸化による起電力ドリフトを抑えており、常用限度もK型より高く設定されています。K型で高温安定性に不満があるなら、N型を検討する価値があります。

K型の落とし穴 ― 中温域での起電力変化(SRO)

K型を使ううえで知っておきたいのが、短範囲規則性(Short Range Ordering、SRO)と呼ばれる現象です。K熱電対の**+脚(クロメル)**の主成分であるニッケルとクロムの原子配列が、250〜550℃の範囲で規則的に配列することでゼーベック係数が増加し、その温度に曝された部分が不均質になります。この不均質な部分に温度勾配が与えられると、熱起電力が増加します。

厄介なのは、その進み方の速さです。影響が最も大きいのは350〜450℃で、350℃の場合、5分間で0.9℃、45分間で1.9℃、7時間で3.7℃、30日間で5℃といった誤差が生じます。据え付けてしばらく経ってから、じわじわ値がずれていく、という形で現れます。

この現象は可逆で、約650℃以上に加熱すると規則性がなくなり元の状態に戻ります。つまり、常時650℃以上で使う炉なら問題になりにくく、300〜500℃を行き来する乾燥炉や熱処理の予熱帯のような用途でこそ効いてきます。この温度域で精度が要るなら、N型への置き換えが素直な解になります。

なお、誤差が出る引き金が「不均質な部分に温度勾配がかかること」である点は、コネクタや端子で誤差が生まれる仕組みと同じ理屈です。測定系全体を通じて、温度勾配のかかる場所に注意を払うという原則で説明がつきます。

貴金属系のタイプ

R型とS型は、白金ロジウムと白金を組み合わせた貴金属熱電対です。常用限度1400℃、過熱使用限度1600℃の高温に耐え、ばらつきや劣化が少なく精度に優れます。とくにS型は、その安定性から実用標準器として温度の基準にも使われます(1990年国際温度目盛では熱電対は定義の内挿計器から外れており、位置づけは実用標準です)。起電力は小さいので、計器側の分解能が要ります。

R型とS型は組成が近く、ロジウムの比率がわずかに違います。実用上の使い分けは、設備や計器の対応、求める起電力特性によることが多いです。

B型はさらに高温向けで、常用限度1500℃、過熱使用限度1700℃の超高温測定に使われます。B型は常温付近での起電力が非常に小さいため、室温の基準接点の影響を受けにくいという特徴もあります。ただし裏を返せば低温域では分解能が出ず、JIS の許容差も600℃以上でしか規定されていません。B型は「低温も測れるが精度が出ない」のではなく、低温域はそもそも規格の適用外と理解しておくのが正確です。

いずれも高価なため、卑金属系で足りる用途にあえて使うものではありません。高温・高精度がどうしても要る場面、あるいは温度の基準として正確さが要る場面のための選択肢です。貴金属系を検討するときは、保護管や計器まで含めると費用がかさむので、本当にその温度域・精度が必要かを先に詰めておきたいところです。

色で見分ける ― 出典はJIS C 1610

タイプを見分ける手がかりとして、まず色があります。ここで一つ整理しておきたいことがあります。タイプごとの識別色を定めているのは、熱電対そのものの規格(JIS C 1602)ではなく、補償導線の規格(JIS C 1610)です。 JIS C 1602 が色について規定しているのは、極性を色別で表示する場合に+側を赤で表す、という一点だけです。

そして JIS C 1610 の色は、二段構えになっています。

K型の色
現行 JIS C1610-2012(IEC準拠)/1995年版 区分1緑
JIS C1610-1995 区分2(=1981年版までの旧色)青
ANSI黄

JIS C 1610 は1995年の改正でIEC整合の「区分1」を採用しましたが、一度に色を変えると同種異色品が混在して支障が出るため、従来の色を「区分2」として残しました。そして2012年の改正で、現行はIEC準拠の色分けとなっています。「K型はJISで青」というのは旧色(区分2)の話で、現行JISではIECと同じ緑です。旧色品は今も広く流通しており、現場にはどちらも存在すると考えるのが正しい前提です。

極性の色も規格で異なります。区分1では+側が表面被覆と同色・−側が白、区分2および旧JISでは+側が赤・−側が白です。

つまり、色から言えるのは「このタイプかもしれない」までで、規格を特定できなければタイプも特定できません。色はあくまで第一の手がかりにとどめ、最終的には刻印されたタイプ記号と規格名で確認するのが安全です。補償導線側の色の扱いは「補償導線とは|役割と選び方」にもまとめています。

色以外の見分け方

色が消えていたり、規格が分からないときに効く見分け方もあります。

代表的なのが磁石です。ただし「磁石についたらK型」という覚え方は危険で、J型の+側は純鉄なので、K型のアルメルよりはるかに強く磁石につきます。正しくは、どちら側がつくかを見ます。

  • +側が強くつく → J型(鉄)
  • −側がつく → K型(アルメル)
  • どちらもつかない → T・E・R・S・B型の可能性

もう一点、アルメルのキュリー点は150℃付近にあり、加熱すると磁性を失います。稼働中の設備で判定するときは、常温まで下がってから確認してください。

もう一つは起電力での確認です。タイプごとに温度と起電力の関係(規準熱起電力表)が違うので、既知の温度で起電力を測れば、どのタイプの表に合うかでタイプを判別できます。感度の差は大きく、0〜100℃付近でK型が約41μV/℃、E型はさらに大きく、R・S型は一桁小さい値です。ただしこれは計器と基準温度が要るので、現場での簡易判定というより、最終確認の手段です。

記号の刻印が残っていれば、それを読むのがいちばん確実なのは言うまでもありません。見分けに迷ったら、色・磁石・刻印・起電力を組み合わせて、ひとつの根拠で決めつけないことです。とくに測定の正否が品質や安全に直結するラインでは、見た目だけで判断せず、起電力や図面まで当たって裏を取る慎重さが要ると考えています。手間に見えても、取り違えによる測定ミスの後始末よりはるかに安く済みます。

使う雰囲気で寿命が変わる

タイプ選びは温度域だけでは決まりません。同じ温度でも、まわりの雰囲気(酸化性か還元性か、硫黄や金属蒸気があるか)によって、熱電対の寿命と精度の保ち方が変わります。ここを外すと、温度域は合っているのに早く劣化する、という事態になります。

K型は酸化性の雰囲気では比較的安定して使えますが、還元性の雰囲気や硫黄分には弱いとされます。とくに酸素が少ない雰囲気では、クロメル中のクロムが選択的に酸化される「緑食(グリーンロット)」が起こり、起電力が低下します。保護管内の残留酸素や、シースのわずかなリークが引き金になるため、雰囲気炉では見落とされやすい劣化モードです。

J型は還元性に比較的強い反面、鉄を使うため酸化やサビには注意が要ります。貴金属系のR・S・B型は高温の酸化性雰囲気に強いですが、還元性雰囲気や金属蒸気では白金が汚染されて劣化することがあり、保護管に入れて使うのが基本です。N型はK型より高温の酸化に強く、雰囲気変動のある高温ラインで安定しやすいタイプです。

雰囲気が厳しい現場ほど、タイプの選定と保護管の組み合わせをセットで考えたいところです。

精度(許容差クラス)でも絞る

タイプが同じでも、精度には等級があります。JIS C 1602:2015 は許容差をクラス1・クラス2・クラス3として規定しています。ここで押さえておきたいのが、クラス3は「クラス2よりさらに緩い等級」ではないという点です。

N・K・E・T熱電対のクラス3は、−200℃以上40℃未満という低温域に与えられています。クラス1・クラス2(−40℃以上)とは温度範囲そのものが違い、事実上の低温用クラスです。しかも規格には、−40℃以上の範囲でクラス1・クラス2を満たす熱電対でも、クラス3で与えられた温度範囲では特別な場合を除き許容差に入らない、と明記されています。「クラス1の品を買えば低温域も高精度」という思い込みは成立しません。低温域の精度が要るなら、その温度範囲で許容差が規定された品を指定する必要があります。

クラスの有無もタイプによって違います。B型にはクラス1がなく、クラス2とクラス3のみです。R・S型とJ型にはクラス3がありません。C型はクラス2だけです。「クラス1で発注」が通らないタイプがあることは、仕様書を書く段階で効いてきます。

参考までに、全タイプの中でもっとも厳しいのはT型クラス1の −40〜125℃で±0.5℃です。「T型は低温高精度」という評価は、この数字に裏付けられています。

ここで現実的な注意があります。熱電対単体の精度を上げても、補償導線や計器、設置のしかたが伴わなければ、システム全体の精度はそこまで出ません。精度はタイプと等級だけでなく、測定系全体で決まります。過剰な等級にコストをかける前に、どこが精度のボトルネックかを見極めたいところです。

シース構造との組み合わせ

実際の現場では、素線をむき出しで使うより、金属シース(保護管)で覆ったシース熱電対の形で使うことが多いです。シース熱電対は JIS C 1605 に規定されています。シースに覆うことで、過酷な雰囲気や機械的なストレスから素線を守れます。シースの材質は使用温度と雰囲気で選び、一般的なステンレスから、高温向けのインコネル系まであります。

接点の作り方にも、応答が速く丈夫な接地型、ノイズに強い非接地型、応答最速だが過酷環境に置けない露出型があります。タイプ(K・T・Rなど)と、シース材質、接点構造。この三つを使用条件に合わせて組み合わせて、はじめて一本のセンサとして仕様が決まります。シース熱電対の選び方は別記事で扱いますが、ここではタイプ選定とセットで考えるべき要素として押さえておきましょう。

「KとTの違い」のような迷いどころ

検索でよく見かける「KとTの違い」は、突き詰めると温度域と精度の住み分けに行き着きます。K型は高温側まで測れる代わりに、低温域の精度はT型に譲ります。T型は常用限度300℃(φ1.6)が上限ですが、マイナス域から室温にかけての精度と安定性が高いです。だから高温の炉や排気まわりならK型、低温の冷凍・冷蔵まわりならT型、と用途で割り切れます。

同じように「KとEの違い」なら感度(E型のほうが起電力が大きい)、「KとNの違い」なら高温安定性と中温域のSRO耐性(いずれもN型が有利)が判断軸になります。タイプ同士を比べるときは、温度域・精度・感度・高温安定性・コストのどれを重視するかを先に決めると、迷いが減ります。

比較で迷ったら、まず「外せない条件」を一つ決めるとよいでしょう。たとえば測定上限が最優先なら高温に耐えるタイプから、低温の精度が命ならT型から、というように、最も譲れない軸を起点に絞ると、残りの条件は後から調整できます。すべてを同時に最適化しようとすると、かえって決まりません。

既設のラインに合わせて選ぶとき

新規に選ぶ場合と、既設の熱電対を交換・増設する場合とでは、確認すべき順番が少し変わります。既設に合わせるときは、まず今ついている熱電対のタイプを確実に特定することが先決です。ここで前述の見分け方(刻印・色・磁石)が効いてきます。タイプを取り違えて別タイプに替えると、計器側の設定と食い違い、温度が大きくずれてしまいます。

タイプを特定したら、計器(温度調節計やデータロガー)側がそのタイプに設定されているかを確認します。熱電対・補償導線・計器設定の三つが同じタイプでそろっていて、はじめて正しく測れます。一つでもずれると、配線が正しくても表示は狂います。増設の場合も、既設と同じタイプ・同じ規格でそろえるのが原則です。系統の途中で別タイプや別規格が混ざると、トラブルシューティングが一気に難しくなります。

迷いやすいのが、古い設備で記号の刻印が読めないケースです。この場合は無理に推測せず、磁石や起電力での確認、あるいは設備の図面・仕様書まで遡って特定します。交換のついでにタイプを変えたいなら、計器設定や補償導線まで含めてライン全体で見直します。部分的に替えると、かえって不整合を生むことがあります。

タイプ選定の進め方

選定は順番に考えると外しにくいです。

  1. 測定温度域でタイプを絞る。ただし上限は常用限度で見る。1000℃級までの一般用途ならK型、低温・高精度ならT型、1400℃超ならR・S・B型、高温で長期安定が要るならN型
  2. 素線径を確認する。同じタイプでも細い線は常用限度が大きく下がる
  3. 設置環境(酸化・還元の雰囲気、腐食性)を見る。保護管とセットで考える
  4. 必要な精度(許容差クラス)を決める。低温域はクラス3の適用範囲を確認する
  5. コネクタ・補償導線・計器の対応タイプまでそろえる

タイプだけ正しくても、コネクタや計器設定が食い違えば正しく測れません。タイプ・コネクタ・補償導線・計器設定を一つの組として最後にそろえて見直すのが、測定系を確実にまとめるコツです。

用途に合うタイプを選ぶために

アイリス社では オメガ(OMEGA)製の熱電対コネクタを扱っています。「この温度域・この環境にどのタイプが合うか」「手元の機器のタイプ・規格にコネクタを合わせたい」といった選定の段階から、技術的な相談に対応できます。まずは熱電対コネクタの一覧で、タイプや規格ごとに実物を見比べてみてください。タイプが決まったら、配線側は「補償導線とは|役割と選び方」も合わせて確認すると、測定系を一気通貫で組めます。

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